環境首都創造ネットワーク 共同研修(2017年度)

投稿日 2017年11月29日

環境首都創造ネットワークでは、自治体と NPO、研究者が一体となって、持続可能な社会づくりに向けた活動を進めています。その一環として 4 人の講師をお招きし、共同研修を行いましたので、報告します。

講義 1「地域ぐるみの ESD 持続可能な地域づくりに人々が参加するコツ」
(岡山市京山地区 ESD 推進協議会会長 池田満之氏)

ESD とは持続可能な社会の担い手を育む教育であり、持続可能な社会を実現するために、価値観と行動を変革することを目指すものである。これには、自分たちの社会や地域を知り、自らが未来に向けてどう関わっていくかを自分事として捉える意識を育むことが重要である。この当事者意識を育むには、「共感」から「協働」につながるストーリー性のある成功例を創り出すこと、その活動を通じて自信と信頼と参加を得ることがポイントである。また参加できる場や成功例を作り出す仕組みをつくること、活動成果の進捗を把握することなどがコツとして挙げられる。

講義 2「コウノトリは日本の環境を救えるか -持続可能な地域づくりへ-」
(コウノトリ湿地ネット代表 佐竹節夫氏)

コウノトリは、農薬が普及する以前の水田環境が作り上げた、豊かな生態系ピラミッドの上位に位置してきた生物である。つまり、コウノトリを野生復帰させることは、豊かな生態系ピラミッドを育む水田を再生することと言える。かつては、自然保護か開発かの二者択一だったが、今は両立ができる。コウノトリブランドを活かした産業振興ができるためである。これを進めるには、関係者(行政、農協、生産者等)連携のもと目指す姿を共有し、PDCA サイクルで取り組みを進めることが重要である。さらに、この取り組みは学校や地域を巻き込むことで、次世代の育成や地域力の再生にもつながっている。

講義 3「地域エネルギー政策を確立する」
((一社)地域政策デザインオフィス代表理事 田中信一郎氏)

自治体でエネルギー政策を行うには、まず、なぜ行うかを地域の人に伝わるよう説明できなければならない。つまり、地球のために、という漠然とした表現ではなく、何が地域にもたらされるかを明確に説明することが求められる。エネルギーの取り組みを地域で行うことは、域外への支出を抑え域内投資を増やすという文脈で地域経済に寄与するが、これを進めることは、条例等を通じてあらゆる自治体で可能である。例えば、省エネラベルのように光熱費表示を義務化することで、また、断熱性向上による健康影響を示すことで、人々の選択や行動を変えることができる。長野県の例などを参考に取り組みが進むことを期待する。

講義 4「FIT改定に自治体としてどう対応するか」
(環境エネルギー政策研究所主任研究員・理事 山下紀明氏)

自治体に再生可能エネルギーを進める理由を尋ねると、温暖化対策やエネルギー地産地消、地域活性化のためという回答が多く見られる。これも先の講義の通り、その理由をより明確にしなければならない。今回の FIT 改定では、筋の悪い案件は認定を得にくくなったが、住民トラブル減少についてはそれほど影響がなく、また、地域の小規模主体の取り組みが厳しくなる可能性が考えられる。今後は、地域による地域が元気になる再生可能エネルギー事業が求められる。

 

【環境首都創造ネットワーク共同研修 プログラム】

日時:10/4(水)(10時00分開始、16時30分終了)
会場:第8長谷ビル 8階B室(京都市下京区烏丸通仏光寺下ル大政所町680-1)
対象者:自治体職員をはじめとする環境首都創造ネットワーク会員

1 午前10時5分~午前11時20分
「地域ぐるみのESD 持続可能な地域づくりに人々が参加するコツ」
岡山市京山地区ESD推進協議会会長 池田満之氏

2 午前11時30分~午後0時45分
「コウノトリは日本の環境を救えるか ―持続可能な地域づくりへ―」
NPOコウノトリ湿地ネット代表(元豊岡市コウノトリ共生課長) 佐竹節夫氏

3 午後1時45分~午後3時00分
「地域エネルギー政策を確立する」
(一社)地域政策デザインオフィス代表理事(元長野県環境エネルギー課企画幹)
田中信一郎氏

4 午後3時10分~午後4時25分
「FIT改定に自治体としてどう対応するか」
環境エネルギー政策研究所主任研究員・理事 山下紀明氏