2017年度 環境首都創造公開セミナー(1/31、2/1京都)

投稿日 2018年1月26日

2017年度 環境首都創造公開セミナー 開催報告

環境首都創造ネットワークが連携する環境首都創造NGO全国ネットワークでは、気候変動防止につながる、持続可能な地域社会づくりに向けた活動を進めています。その一環として1月31日と2月1日の二日間、4人の講師をお招きし、セミナーを開催しましたので、概要を報告します。

レクチャー1「欧州環境先進自治体のネットワークと基盤となるEU政策」
(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員 増原直樹氏、名古屋大学准教授 杉山範子氏)

日本でもEUのように経済成長よりも持続可能性を前面とする戦略が不可欠である。その上で、温室効果ガス排出量削減率や再生可能エネルギー導入率についての、より高い目標を掲げることが重要である。さらに、このような戦略と目標を庁内全体に行き渡らせることが重要である。EUには気候同盟や首長誓約という場や取り組みを通じて、自治体がネットワークを組み、情報を学び合い発信する仕組みがあるが、このようなことも重要である。自治体が国に先んじて実施した事例が先進モデルとなり社会の仕組みを変えていくことが往々にしてあるが、先進事例の普及のためにも、日本でも環境首都創造ネットワークや環境自治体会議などの自治体ネットワークの取り組みが期待される。

レクチャー2「北九州市の環境政策~SDGsを実現するまちづくり~」
(北九州市環境局総務課環境政策広報係長 大庭繁樹氏)

公害をパートナーシップにより克服した。2004年には市民・企業・行政により環境首都グランド・デザインを策定し、新産業創出、国際貢献、地域エネルギー拠点化推進事業、生態系保全に取り組んできた。この間の歴史は、普遍性・包摂性・参画性・統合性・透明性と説明責任にマッチしたSDGsそのものである。SDGsは世界の共通言語=国際ブランドかつ客観的な分析ツールであり、地域課題解決に向けた気づきの機会としても地域・企業に好影響を与える。その実装化に向け、取り組みの本業への組み込み、ゴールの指標化・目標値の設定、多層的ガバナンスが重要である。真の豊かさにあふれるまちを創るために、過去から学び現在だけでなく未来のために行動し、限りある地球を引き継いでいく。

レクチャー3「地球温暖化対策計画から始まる持続可能な地域づくり」
((一社)地域政策デザインオフィス代表理事 田中信一郎氏)

エネルギー・温暖化対策を自治体で行うことは、光熱費による域外への支出を抑制しエネルギーに係る域内投資を増やすことと言える。これは、光熱費の情報提供や地域主体による再生可能エネルギー事業を行うことによりできる。例えば、長野県では、住宅光熱費の表示制度を導入することで、域外流出していた光熱費を、省エネ住宅に係る域内消費に変えることができた。また、断熱性を高め住宅を省エネ化することは、健康面でも有用である。断熱が十分でないと、ヒートショック(これによる死亡や後遺症等の発症)になる可能性が高まるからである。なお、自治体でこのような施策を進めるためには、免罪符となっている不要不急の施策をやめることも重要である。

レクチャー4「地方自治における気候変動の適応策のあり方」
(法政大学教授 白井信雄氏)

気候変動は地域資源に影響を及ぼす。このことから、地域として気候変動にどう関わっていくのかを考える必要がある。気候変動は、社会の脆弱性のあるところに大きく影響が出る。この脆弱性の改善を行うものが適応策であるが、往々にして短期的で対症療法的な取り組みに行きがちであり、中長期的視点でこの脆弱性を根本から改善する取り組みが求められると言えよう。都道府県や政令市で温暖化計画への適応策の位置づけや方針づくりが始まりつつあるが、社会の脆弱性を根本から改善しようとする適応策の具体化はこれからである。地域の住民、事業者、行政が、地域への気候変動の影響を実感をもって共有し、適応策を主体的に考えていくことが重要である。

2017年度 環境首都創造公開セミナー 概要

■開催趣旨

2016年11月、パリ協定は採択から1年を待たずに発効しました。また、国連は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を全会一致で採択し、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げました。世界は、まさに脱化石、そして持続可能な社会へ向けて大きく舵を切ろうとしています。
このような世界的要請に応えなければならないのは、日本の地域社会も同様であり、地域社会はその変化による社会的影響も大きく受けます。さらに私たちの地域社会では、人口減少、高齢化、雇用の確保、地域の文化や環境の保全など、様々な課題にも戦略的に取り組む必要があります。
私たち環境首都創造NGO全国ネットワークでは、これらの要請に応えるための自治体の総合計画、ローカルアジェンダ21、環境基本計画、地球温暖化対策実行計画などのモデルプランを自治体に提案しようと昨年度から検討を進めています。
本セミナーは、このような課題認識のもとでの、NGO、自治体、研究者による学習と意見、情報の交流の場として開催いたします。

■内容

[ 1月31日(9:40開場 10:00~16:30)]
10:00 開会あいさつ、趣旨説明
10:10~11:50 レクチャー1
「欧州環境先進自治体のネットワークと基盤となるEU政策」講演、質疑応答
(講師:増原直樹さん(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員)、杉山範子さん(名古屋大学准教授))
11:50~12:50 昼食休憩
12:50~14:30 レクチャー2
「北九州市の環境政策~SDGsを実現するまちづくり~」講演、質疑応答
(講師:大庭繁樹さん(北九州市環境局総務課環境政策広報係長))
14:40~16:20 レクチャー3
「地球温暖化対策計画から始まる持続可能な地域づくり」講演、質疑応答
(講師:田中信一郎さん((一社)地域政策デザインオフィス代表理事))

[ 2月 1日(9:40開場 10:00~12:00)]
10:10~11:50 レクチャー4
「地方自治における気候変動の適応策のあり方」
(講師:白井信雄さん(法政大学教授))

■会場

[ 1月31日] メルパルク京都 4階研修室1、2(京都駅烏丸口すぐ)
[ 2月 1日] しんらん交流館 1階会議室D(東本願寺北側(烏丸花屋町西入ル))

■参加費

無料(本セミナーは、(独法)環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催します)

■主催

環境首都創造NGO全国ネットワーク

■協力

環境首都創造ネットワーク、環境自治体会議(予定)

■参加申込方法

「氏名」「所属」「連絡先」「参加日」を office@eco-capital.net までお知らせください。
複数名でのご参加も歓迎いたします。また、部分参加も可能です。ただし、部分参加をご希望の方は、どのレクチャーに参加希望かをあわせてお知らせください。
会場のキャパシティを超えた場合は参加できなくなりますので、できるだけ早めに参加をお知らせください。