【提言11】地域資源を活用した環境調和社会を創造し、持続可能な発展を求める国際社会を牽引しよう。~日本社会への提言~

投稿日 2017年4月7日

全世界的な気候変動(地球温暖化)の進行、生物多様性の崩壊など、私たち人類の生存基盤及び社会経済の存立基盤を揺るがす脅威が深刻化しています。また国内において、集中豪雨の頻発にみられるような環境の劇的な変化とともに、社会的な課題として、全国的な少子高齢化や人口減少による経済社会の活力減退への懸念、地方から都市への人口流入による過疎化などが進行しています。このような課題を克服し、地球環境と共存した持続可能な社会発展を展望し、それをリードできる国づくり・地域づくりが、我が国に求められています。

これまで、私たち自治体では地域を活性化させ、環境と調和した持続可能で豊かな社会をつくるべく、地域の特性に応じた地球温暖化防止政策や再生可能エネルギーの利活用等に取り組んで来ました。また、社会的な課題に対しても様々な政策を実行し、世代から世代へ豊かで安全な暮らしをつないでいけるように努めてきました。

政府においても、地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指して、総理大臣を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」が発足したところです。

こうした中、地域が活性化され、「住み続けたい、住み続けられる豊かで元気な地域づくり」を行うためには、さらなる地域力・住民力の強化、住民参画の促進、地域資源の活用により、持続可能な発展を続ける環境調和社会へと進化していく必要があります。

この環境調和社会の創造という大きな政策実現に向けた構造的な課題解決については、一自治体だけのチャレンジでなく、時には自治体同士が連携し合い、国、都道府県とも連携しながら様々な壁を突破していかなければなりません。こうしたブレイクスルーの連続と経験の蓄積が未来を拓き、やがて我が国を課題解決先進国として国際社会で信頼され尊ばれる地位へと押し上げるものと確信します。

私たちは、自ら市民・事業者と協働して持続可能で豊かな社会づくりに積極的に取り組む自治体及び環境NPOとして、次に掲げる行動を日本社会に向けて提案します。

1. 地域資源の活用及び環境と調和した自立型の循環社会の形成

地域住民と自治体は、自然環境を共に守り合い、育み合う調和のとれた関係の維持、発展に努めること。さらに、地域の資源はそれを守り育む地域により優先的に利用されるべきであるとの理念に基づき、地域が主体的にかつ優先的に地域資源や地域が生み出す再生可能エネルギー等を活用し、その社会的・経済的便益が地域内で自立的に拡大再生産できるような環境調和型の循環型社会の形成に努めること。

2. 地域住民参画の仕組み及び地域資源たる人材の育成

地域課題の解決に必要とされるのは、そこに暮らす住民であるからこそ持ち得る「主体性」であり、「明るい未来創造」への熱意である。そのため、地域住民と自治体は、社会の主人公をはぐくむ環境学習とESDを多様かつ積極的に推進すること。また、自治体は、住民の思いや様々なアイデアを自由に交換できる場づくりを行うとともに、その思いを実現するため、柔軟な予算編成と、組織横断の政策統合を実現すること。さらに、構造的な課題を的確に捉え、幅広い政策分野に精通し、政策実施のための専門性のある人材の育成に努めること。

3. パートナーシップと自治体間のネットワークの強化

地域資源を活用した環境調和社会の創造に向けた活動においては、自治体と地域住民や専門性があるNGO・NPOとのパートナーシップによって相乗的な効果を生み出すことができる。また、周辺自治体や課題を共有する自治体、ときには異なる特性を持った自治体同士の連携により、効果的なノウハウの共有や施策展開が可能となる。自治体はこうした連携が促進されるような政策を実施すること。

4. 政府による地方分権の推進と、持続可能な社会づくりにがんばる地方への積極的支援

政策実現に向けた”社会モデル”を作ることは、我が国のみならず世界各地での持続可能で発展的な社会づくりに意義を示すものに成り得る。そのため特に次の点について、政府に提言する。

国及び都道府県の権限をその財源とともにできる限り市区町村に移管するために、政府は、国、都道府県、市区町村、NPO、学識者をメンバーとする検討会議を早急に立ち上げること。また、その検討と運営にあたっては徹底した情報開示と市区町村や住民の意見を幅広く取り上げることを原則とすること。併せて、政府は、地域創生を実現するために、税制の根本的改革と東京一極集中を抜本的に是正するための検討会議を同様に立ち上げること。

持続可能な社会づくりに向け、自らの責任と判断により地域資源を活用した産業振興、地域経済活性化、環境のまちづくり等に積極的に取り組む自治体及び環境NPOに対して、政府は積極的な支援を行うとともに、意欲ある自治体同士の連携を促進する基盤整備を行うこと。併せて、政府は、幼児からの環境学習とESDを積極的に取り組む自治体及びNPOに対して、その自発性を尊重しながら制度的、財政的な支援を強化すること。

地域が主体的にかつ優先的に地域の再生可能エネルギーを活用し、地域経済の活力を取り戻すと同時に災害への備えもすすめ、もって気候変動防止に資するために、政府は、高い再生可能エネルギー導入目標の設定、関連する法的整備、社会システムの構築、財政的支援など大胆な政策資源の投入を積極的に行うこと。

地域主体の雇用促進やまちづくりに結び付いた再生可能エネルギーの活用が、電力系統強化の遅延等の社会的な取り組みの遅れにより阻害されないように、政府は、電力会社まかせにせずに電力系統の公平な運用をする仕組みを構築すること。また系統運用の技術の革新を図るとともに、系統を流れる電力量や発電種別の発電量等の電力に関する情報開示が行なえるように、基盤整備を早急に行うこと。

2014年12月5日
環境首都創造ネットワーク

環境首都創造ネットワーク(2014年11月30日現在 17自治体 7専門家 16NGO)

参加団体・代表者一覧

自治体 17自治体

北海道 ニセコ町 町長 片山健也
長野県 飯田市 市長 牧野光朗
静岡県 掛川市 市長 松井三郎
静岡県 磐田市 市長 渡部修
愛知県 新城市 市長 穂積亮次
愛知県 安城市 市長 神谷学
愛知県 設楽町 町長 横山光明
岐阜県 多治見市 市長 古川雅典
京都府 京丹後市 市長 中山泰
兵庫県 宝塚市 市長 中川智子
奈良県 生駒市 市長 山下真
奈良県 奈良市 市長 仲川げん
奈良県 斑鳩町 町長 小城利重
鳥取県 北栄町 町長 松本昭夫
愛媛県 内子町 町長 稲本隆壽
山口県 宇部市 市長 久保田后子
熊本県 水俣市 市長 西田弘志

研究者・機関 7機関7人

京都大学大学院経済学研究科 教授 植田和弘
京都大学名誉教授、地球環境戦略研究機関(IGES) シニア・フェロー 松下和夫
京都大学大学院工学研究科・交通政策研究ユニット 教授 中川大
龍谷大学政策学部 教授 白石克孝
循環社会システム研究所 代表、京都大学名誉教授 内藤正明
総合地球環境学研究所 研究員 増原直樹
一橋大学大学院経済学研究科 准教授 山下英俊

NGO 16団体

FoE Japan(東京都) 理事 瀬口亮子
環境エネルギー政策研究所(東京都) 理事・主席研究員 松原弘直
環境文明21(東京都) 共同代表 藤村コノヱ
環境自治体会議環境政策研究所(東京都) 所長 中口毅博
かながわ環境教育研究会(神奈川県) 代表 渡邉敦
ふるさと環境市民(神奈川県) 副代表 安藤多恵子
川崎フューチャー・ネットワーク(神奈川県) 代表理事 三枝信子
南信州おひさま進歩(長野県) 代表理事 松江良夫
中部リサイクル運動市民の会(愛知県) 副代表理事 和喜田恵介
環境市民(京都府) 代表理事 すぎ本育生
気候ネットワーク(京都府・東京都) 理事・事務局長 田浦健朗
公益財団法人公害地域再生センター(大阪府) 理事・事務局長 藤江徹
未来の子(広島県) 共同代表 大西康史
くらしを見つめる会(高知県) 代表 内田洋子
環境ネットワークながさき塾(長崎県) 代表 宮原和明
環境ネットワークくまもと(熊本県) 代表理事 宮北隆志