【提言6】地域からのグリーン・ニューディール、環境と経済の戦略化を~日本社会への提言~

投稿日 2017年4月7日

現在、私たち人類社会は「持続不可能」の危機に直面しています。気候変動、生物多様性の崩壊など、私たちの生存の基盤を危うくする地球規模の環境問題、世界的な人口爆発と食糧資源、水資源の将来的な絶対量不足、石油や鉱物資源などの枯渇、南北問題や各国内における貧富の格差の拡大など、非常に大きな問題が同時進行してきています。産業革命以降、私たちの社会の「豊かさ」を形作ってきた社会的、経済的システムそのもの、文明そのものの危機と言わざるをえません。

10年ほど前からスウェーデン、ドイツ等は環境と経済を両立化させ、持続可能な社会を構築することを、憲法を修正し戦略的に実行に移していました。さらに、一昨年のリーマンショック以来、世界経済の復興、社会の安定をもたらすのは「環境」であるという認識が大きく広がりました。

アメリカのオバマ大統領はグリーン・ニューディールを唱え、日本政府も同調しています。しかし国内における実際の政策はあまり変わらず、各種エコポイントやエコカー減税のような初歩的な取り組みにとどまっています。
雇用の創出や地域経済の活性化は、地域においても最大の課題の一つですが、これらと環境と結びつけた先進的な政策をすすめられている事例も徐々にあらわれています。環境と経済を結びつけ、社会の安定をもたらすためには、それに取り組む主体の広がり、地域の広がり、世代の広がりが不可欠です。ただ、中小企業、個人経営、第一次産業を中心とした地域経済は、まだまだ苦しく先行きも明るくありません。加えて、多くの地域社会では人口減少、地方財政の縮小も進んでいます。

しかし、このような状況はかえって環境、経済、社会の総合化をすすめ、持続可能な社会を形成するチャンスととらえることができます。ピンチをチャンスに変えていくには、自治体が自立性と専門性を高め、地域の特性を活かした戦略的な取り組みを住民参画ですすめるとともに、志を同じくする地域、NPO、事業者が協働していくことが必須です。

そこで、私たち、持続可能な社会づくりに積極的に取り組む自治体及び環境NPOは、自らも積極的な取り組みを行うとともに、次に掲げる行動を日本社会に向けて提案します。

1)環境と経済の統合政策パッケージと行政の総合化、住民参画

自治体は、地域の特性を活かした持続可能な社会づくりをめざし、環境と経済の総合化を戦略的に実行する取り組みを実施すること。そのために自治体は、地域の経済団体、金融機関、企業、NPO等と情報と将来像の共有化を図り、地域社会の自立的発展と経済循環を実現する固有の産業政策を立案・実施する能力を高めること。また、計画策定、予算編成、事業実施、事業評価と見直しの各過程において、行政組織の横断的参画が必然となる仕組みづくりを行うこと。また、その各過程おいて、住民の主体的参画を保障すること。

2)環境適合型製産品、サービスの開発と普及、および協働化

自治体は、その域内及び近隣自治体と共同で、地域の特性に合わせて環境負荷の少ない農林水産品、工業製品、サービス等の認証、推奨する仕組みづくりを構築し積極的に展開すること。また、これら生産品・製品、サービスの開発に取り組む事業者、NPO等への支援、協働を積極的に行うこと。

さらに、これら生産品・製品、サービスの普及推進を自治体、NPOが協働ですすめること。

3)人材の育成と交流

自治体は、このような変革と政策の企画実施のため、NPOとも協働し、専門性のある人材の育成と活用に積極的に取り組むこと。

4)持続可能な社会づくりを国政の基本にすること及び地域主権の推進

政府は、上記の取り組みを各地で積極的にすすめられるよう、権限と財源の地方分権と関与撤廃を飛躍的にすすめること。また、自治体の主体性を尊重する中で、上記政策をすすめる財政的、技術的支援を行うこと
また、政府は国政の基本として、持続可能な社会づくりを据え、環境と経済の戦略的総合化を推し進めること。自治体、NPOは協働で政府に対して、これらをすすめるために必要な政策を提案すること。

【賛同自治体】2011年2月現在、敬称略

八戸市(青森県)市長 小林眞
能代市(秋田県)市長 齊藤滋宣
高畠町(山形県)町長 寒河江信
庄内町(山形県)町長 原田眞樹
遊佐町(山形県)町長 時田博機
会津若松市(福島県)市長 菅家一郎
館林市(群馬県)市長 安樂岡一雄
北本市(埼玉県)市長 石津賢治
伊勢原市(神奈川県)市長 長塚幾子
飯田市(長野県)市長 牧野光朗
千曲市(長野県)市長 近藤清一郎
多治見市(岐阜県)市長 古川雅典
掛川市(静岡県)市長 松井三郎
碧南市(愛知県)市長 禰宜田政信
安城市(愛知県)市長 神谷学
新城市(愛知県)市長 穂積亮次
長浜市(滋賀県)市長 藤井勇治
甲賀市(滋賀県)市長 中嶋武嗣
高島市(滋賀県)市長 西川喜代治
南丹市(京都府)市長 佐々木稔納
交野市(大阪府)市長 中田仁公
加西市(兵庫県)市長 中川暢三
生駒市(奈良県)市長 山下真
北栄町(鳥取県)町長 松本昭夫
宇部市(山口県)市長 久保田后子
上勝町(徳島県)町長 笠松和市
西条市(愛媛県)市長 伊藤宏太郎
四万十町(高知県)町長 瀬満伸
大木町(福岡県)町長 石川潤一
佐賀市(佐賀県)市長 秀島敏行
八代市(熊本県)市長 福島和敏
水俣市(熊本県)市長 宮本勝彬
天草市(熊本県)市長 安田公寛