気候変動は、人類の生存さえかかった大きな問題であり、待ったなしの対応が必要とされています。この問題を真摯に受け止め、私たちは2010年に「地域の主体性を大切にした、再生可能エネルギーの飛躍的拡大~日本社会への提案~」を行い、その実現のために行動を続けてきました。
本年9月に国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表した第5次評価報告第1作業部会報告書では、20世紀半ば以降の気候変動の主因が人間活動である可能性を「極めて高い(95%以上)」とほぼ決定づけ、気候変動による甚大な被害を防止するためには、エネルギー政策をはじめとした、人間活動の根本的転換が必要であることを明確に示しました。実際に、日本においても、世界各地においても、酷暑、豪雨、干ばつ、竜巻などの異常気象が頻発し大きな被害が発生しています。ただ、残念なことに、国際社会においては京都議定書に代わる枠組みづくりについてさえ、国の利害対立が続きその目途はたっていません。
さらに、2011年3月の東日本大地震とそれに起因する福島第1原子力発電所の事故によって、既存エネルギーシステムの脆弱性が明らかになり、エネルギーの在り方について大きな枠組みの転換が日本社会に求められています。私たちは、これに対しても2011年に「地域の主体性を大切にした、再生可能エネルギーの飛躍的拡大と低エネルギー社会実現に関する緊急提案」を行い、地域での行動をさらに進めてまいりました。
しかしながら、政府は温室効果ガス削減の2020年までの目標を、90年比で実質増加という後退した数値をCOP19で示し、EU、小島嶼国連合やNGO等から大きな批判を浴びました。また、未だに、再生可能エネルギー比率を飛躍的に高めることを念頭においた中長期目標値、及び国としての最終消費エネルギーを低減する目標値を設定していないように、気候変動問題に対応する根源的な政策転換がなされていません。
このような状況を受け、私たち環境首都創造ネットワークは、「環境首都創造全国フォーラム2013 in掛川」での議論に基づき、政府に対して次の提言をします。
<h2>記</h2>
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<li>政府は気候変動問題に真摯に対応し、温室効果ガスを2020年までに2005年比3.8%減という後退した目標値を直ちに見直し、健全で恵み豊かな地球の環境を将来世代に継承していくという現在を生きる我々に課された責務をしっかりと果たすため、少なくとも1990年比で2020年に25%減、2050年に80%減の削減目標を明確に示し、それを実現していく政策を構築すること。</li>
<li>政府は、エネルギー政策を根本的に転換し、再生可能エネルギー比率を飛躍的に高めるために、その大胆な中長期目標値、及び最終消費エネルギーを低減する目標値を、早期に設定すること。</li>
<li>政府は、地域が主体的にかつその特性に合わせた再生可能エネルギー推進及び低エネルギー型社会構造への転換をすすめられるように、これまでの啓発や補助金にとどまらない法的整備、社会システムの構築、財政誘導、人材育成サポートなどの政策を行うこと。</li>
<li>その政策の一環として、次のような具体的政策を直ちに講じること<ol><li>再生可能エネルギー固定価格買い取り価格を、再生可能エネルギーの飛躍的拡大を促すインセンティブが働くととともに、投資額に見合った投資回収可能な金額に設定すること。また地域の状況に対応した地域主体の再生可能エネルギー事業が促進されるような細やかな価格設定を行うこと。</li><li>太陽熱利用の普及、太陽光等の蓄電技術の推進のための具体的支援策を講じること</li><li>発送電分離、送電網の公共的利用の拡大、電力事業への新規参入の障壁除去等、電力事業の抜本的構造改革を早急に進めること。</li><li>地域主体で地域の公益につながる再生可能エネルギー導入の飛躍的拡大を保障するため、地域資源の地域の優先利用を市民の権利とする「地域環境権」の法的位置付けを明確にしていくこと。</li><li>電気事業者等のエネルギー事業者が、地域のエネルギー使用量、太陽光発電等再生可能エネルギーの導入量データなど、自治体が再生可能エネルギー普及の戦略を立てる上での基礎となるデータを積極的に提供するように、政府はこれらの情報開示が早急になされるように必要な措置をとること。</li></ol></li>
<li>政府はこのような政策をすすめる過程において、自治体及び国民の参画を多様な手法で実現すること。</li>
</ol>
以上
2013年12月20日
環境首都創造ネットワーク